RoboGamesを日本語Ustream中継してみた感想や反省点、使用機材など

RoboGamesを日本語Ustream中継してみた感想や反省点、使用機材などをまとめてミタ


今回、2日間にわたって世界最大のロボットバトルイベント『RoboGames 2010』を日本語で Ustream 中継(http://www.ustream.tv/channel/robogames2010jp, Twitterハッシュタグ: #robogames2010jp)してきましたが、そこで色々と自分なりのノウハウがたまったので、忘れないうちにここにメモしておくことにします。


まずは、この2日間、機材を背負って広い会場中を歩き回りながら、私と「GetRobo」の 影木 さんの二人で中継してきた感想を一言で:


中継してる最中は、全く「機材が重い」とか「腰が痛い」とか感じなかった。そんなこと感じてる余裕すら無かったとも言える。全神経は「とにかく、今目の前で起こっていることを中継しなきゃ」という想いでいっぱいいっぱいだった。


以前お会いしたTVプロダクションのビデオカメラマンの方がおっしゃっていたことを思い出す。「一旦カメラ回し始めたら、何が起こってもカメラは放しません。たとえ死んでも撮り続けます」。その気持ちが少しだけ、わかった気がした。

たぶん、Ustream で(カジュアルではなく)気合い入れて中継したことのある人なら、同じ感想を持ってくれると思う。ダダ漏れライブの そらの さん、貴方の気持ちが少しだけわかった気がします(たぶん)


それでは、今回使用した機材の紹介から:

  • PCMacBook (Core 2 Duo 2.4GHz / RAM-4GB / SSD-32GB) 2年以上前の MacBook です。それに $90 で買った 32GB の SSD を載せて使用(衝撃があっても大丈夫なように)。交換用予備バッテリー1本(ebay で $35 で購入)。MacBook は歩きながらキーボードが打てるよう駅弁売りスタイル(画板スタイル)で首から下げて使用(後ほど説明)
  • ビデオカメラPanasonic DV Camcorder PV-GS31 に 0.5 倍のワイドコンバージョンレンズ(amazon.com で $20 で購入)を外付け。映像は IEEE-1394 (FireWire) で MacBookFireWire ポートに接続、音声はスレテオケーブルでオーディオミキサーに接続。ズーム操作はリモートでできるよう改造(後ほど説明)
  • 三脚:ごく一般的なもの。伸ばすと約 1.5m くらいの長さになるやつ
  • オーティオミキサーAZDEN CAM-3 3 Channel Mic Mixer(amazon.com で $45 で購入)、電源不要のパッシブミキサー。ビデオカメラの音声(R+L)、インタビュー用ワイアレスマイク受信機(R)、私のインカムマイク(L)で計3チャネル。BGM はインカムマイクと iPod を差し替えて入れていた
  • ワイアレスマイクaudio-technica ATR-288W VHF Wireless Microphone System(amazon.com で $131 で購入)、ピンマイクとインタビュー用のハンドマイクが付いてました。今回は 影木 さんがずっと持ってインタビューに使っていました
  • インカムマイク:上記 ATR-288W に付いてきたピンマイクを、AGC 付きマイクアンプ替わりに Roland EDIROL に入力し、EDIROL のモニター出力を上記ミキサーに接続
  • モニター用ヘッドフォンiPod 付属のインナーイヤーフォン


以上が今回使用した機材のリスト。
ここからは、各機材についての細かい説明やら、中継していて気づいた点などを細かく書いていきます。

  • 中継用ノートPC

今回はとにかく「中継しながら Twitter もやる」というのが1つの目標だったので、カメラを回しながら立った状態で両手でキーボードがバリバリ打てるようにするためには、どうすればいいのかをひたすら考えた。その結果、「駅弁売りスタイル」という、ノートPCにストラップを取り付け、それを首から下げて使用した。実際には、1本のヒモを、ズボンのベルトを通す輪を通して腰回りを一周させ、それがノートPC下でXにクロスして、この上にノートPCが載るような形にした。そうすることでキーボード部分が常に体と垂直になるような形で固定される。最初はその細いヒモを首からかけてみたが、長時間の使用だとヒモが食い込んで痛くなりそうだったので、ビデオカメラに付いていたネックストラップを細いヒモで延長するような方式に変更した。このお陰で8時間にもおよぶ長時間の使用でも、首周りが痛くなることは無かった。
写真http://twitpic.com/1gpx1u
動画http://yfrog.us/bf9l1z
しかし、どうしても重心が前の方になってしまうので、無意識に腰に後ろ向きのテンションが常にかかっていたらしく、1日目の中継が終わる頃には腰がヒドい筋肉痛になっていた。これを防ぐには、背中側にカウンターウェイトを担げばいいような気がするので、後で話する外部バッテリーを担げば丁度いいような気がする。

  • ビデオカメラ

以前使っていた、かなり安い DV ビデオカメラを使用。バッテリーは付属の小さいものと、後から買った大容量のものを2個用意した。大容量のもので約3時間ほど使えたので、実際には途中途中で充電し、小さい方を使うことは無かった。ビデオカメラには DV テープは入れずに、単にズーム付き FireWire カメラ&マイクとして使用していた。
ビデオカメラ側のモニター液晶は一切使用せず、常にPC側の Ustream Producer 画面でモニターしていた。つまり、カメラを操作している間は常にPCの画面を見ていたということ。
ちなみにカメラ側のモニターだと、実際の撮影画面の8割くらいしか表示されておらず、ワイドコンバージョンレンズの周辺がケラれているのは、PCに繋いで見てみるまで気づかなかった。

  • カメラレンズ

かなり広い会場の雰囲気をうまく伝えるためには、絶対に広角系レンズが必要だと思っていたので、迷わず(一番安い)ワイドコンバージョンレンズを購入。倍率が極端だと魚眼レンズになってしまい、逆に観づらくなってしまうので、今回は 0.5 倍というコンバージョンレンズを購入した。確かにズームのワイド端では周辺がケラれてしまっていたが、手動で毎回ちょっとだけテレ側に寄せておけばOKだった。このレンズのお陰で、地上高 3m からほぼコンバットロボットのアリーナ全体が入る画角を手に入れることができた。普通の家庭用として使う分にも、これくらい画角がある方がずっと使い易いと思う。私が常用しているハイビジョンビデオカメラは、買った当初からワイドコンバージョンレンズを付けっぱなしで使用している。

  • マイク&ミキサー

購入したワイアレスマイクは、ほぼ問題なく機能してくれた。ただ時々、インタビューマイクのケーブルがアンテナがわりになっているためか、そのケーブルの状態によっては瞬間的にホワイトノイズが乗ることがあった。送受信機ともに 006P-9V 電池で8時間まるまる使えた。受信機は左腰のズボンベルトに引っ掛けて使用した。左腰だった理由は、MacBookのラインイン入力が左側にあったからという単純な理由です。
小型ミキサーは、本当に簡易的なものだったが、とりあえず使えた。ミキサーは両面テープでワイアレスマイク受信機の上に亀の子状態で接着して使用した。

  • カメラアングル

今回は三脚にカメラを載せていたのだが、実際に三脚を地面に置いて使用していたのは、恐らく全中継時間の半分以下だったと思う。あとはひたすら三脚を両手で支えながらの中継だった。その間は両手がふさがってしまい、結果として当初予定していた「Twitter でつぶやきながら中継」というスタイルを実現することがほぼ不可能となってしまった。
影木 さんがインタビューをしている間は、ずっとその場面(とかグループとか)を映していてもつまらないので、結局は三脚を地面に置いての撮影が半分、三脚を抱えてロボットなどを撮影するのが半分、という感じだった。
あと、イベント会場ではよくある光景だが、とにかく人気のブースには人が群がっていて後から近づくのは超困難。なので、そういう場合は、三脚を応援団の応援旗よろしく腰の辺で支えながら、カメラを地上 2.5 ~ 3m 付近まで高く掲げて中継していた。1日目にその撮影スタイルをあみだしたものの、その間ズーム操作が全くできないため、ほぼ広角固定で中継するしかなかったが、1日目の夜に「リモートズーム操作装置」を開発し、2日目からはカメラを高く掲げながらにして、手元で自由自在にズームすることができるようになった。これはかなり画期的であった。
ちなみにその「リモートズーム操作装置」だが、実はズームスイッチの上に、強力両面テープでヒモを引っ掛けるためのプラスチック片を接着し、そこに荷造り用のヒモを結んだだけの簡単なもの(笑)だったが、一度も不具合なく動作してくれた。制作時間たったの約10分で、ここまで役に立ってくれたのは感動。
写真http://twitpic.com/1i3mqx
ただ実際には、これだけの装備をかかえ、二人でインタビューしながら会場中を歩き回っていたため「この人たちは RoboGames の中の人たちかな?」と思ってもらえてたようで、そういう混み混みの場所でもサッと前の方に入れてもらえることも多かった。

  • ネット回線

今回の中継を残念ながら失敗だったと位置づけてしまうとすると、その原因はとにかく「ネット環境が不安定だった」からに尽きると思う。
今回、事前に主催者側が用意する WiFi を使用させてもらう、という約束で会場に向かったのだが、そこで我々を待っていたのは、携帯電話の 3G 回線を使用するための USB データモジュールが WiFi ルータがわりの MacBook Pro に刺さっているという、それだけの物だったのだ。それも会場から少し離れた貴重品管理室の中に設置されていて、近くまで行かないと電波すら入らないという状況であった。
なので仕方なく、バックアッププランの 3G 携帯電話を Bluetoothテザリングして使用する方法で、まずは配信をスタートしたが、今度は Bluetooth のコネクションが数分おきに切れるという、今まで体験したことの無い不思議な現象が発生した。恐らく会場内で 2.4GHz 帯の無線が多用されていたためなのか、ロボットバトルで発生した異常な電磁波のせいなのか結局わからなかったが、とにかく微弱電波系は実に不安定であった。
そのため最後は1日 $10 の、会場に設置された有料 WiFi を使用することになった。しかしこの有料 WiFi がまたクセモノで、どこにベースステーションが設置されているのかわからないが、肝心の建物の中ではシグナルが弱く、外に出ると大丈夫という状態であった。手元で常時 ping で接続状況をモニターしつつ使用していたが、ターンアラウンドタイムが 20ms ~ 2000ms と激しく変化し、パケットロスが多発する中、やはり中継も途切れ途切れとなっていた模様。
しかし、そういうことも想定して、WiFi レンジエクステンダー(D-Link DWL-G710)という昔買った WiFi 中継機を持って行っていたので、それを1日目の最後の方で導入してみたところ、パケットロスはほぼ無くなり、かなり安定して中継できるようになった。
これで2日目は大丈夫だろうと安心していたのだが、実際には1日目よりも状況はヒドくなっていた。もしかすると土曜日で参加者と観客が増え、有料 WiFi を使用する人も増えたのかもしれないが、詳しく原因を調べる余裕は無く、そのまま中継をつづけざるお得なかった。後から考えると、恐らく会場内で有料 WiFi を使っていた人たち全員が、私が設置した中継機経由でアクセスしていたのではないだろうか。というわけで、この部分の改善方法を少し考えてみた。
例えば、有料 WiFiベースステーションからできるだけ近い場所の会場内に、独自の WiFi 中継機を設置する、というものだ。ここで言う中継機とは、私が今回使用したような WiFi レンジエクステンダーではなく、一旦 WiFi を受信し、Ethernet に変換した後、それを今度は独自の WiFi ベースステーションから別の SSID で流す、というものだ。こうすることで、有料 WiFiベースステーションに対して、会場内の誰よりも安定したコネクションを維持することが可能となる一方、そこから先は独自の SSID で自分だけが使用できる WiFi 回線となるため、他の人と共有することは無くなり、安定した通信を確保できるはず。欲を言えば、その中継機に複数の通信回線(キャリアが違う複数の 3G 回線など)も接続しておき、複数回線を1本の仮想の太い回線としてネット上のプロキシーサーバまで通しておいて、そこから Ustream サーバと繋ぐようなことができればいいのになぁ。

  • その他、こうすればよかった、こういう機材が欲しかった、など:

そもそも、コイツら何やってんの??と周りから思われていたっぽいので、次回はTシャツや三脚に「We're USTREAMing to Japan NOW!」とか書いておこうと思った。背中に 10 インチくらいの液晶TVを担いで、中継画像を流しててもいいかもしれない。
それと、主催者側が用意してくれるはずだったプレス向けネームプレートが当日用意されていなかったので、それも「コイツら何なの?」感をうみだす原因だったと思う。
あと、使用した機材が当然のことながらバッテリー駆動のものばかりだったため、そのバッテリー残量の確認や交換などがかなり面倒だった。なので次は、多少重くても外部バッテリーを1つ用意して、そこから各機材に必要な電圧で一括供給できる電源システムを用意したい。HyperMac の 150W のやつくらいがあれば8時間の中継でも大丈夫なような気がするけど、バッテリーに $400 ってどうよ(笑)その場合は USB から DC-DC コンバータ経由で他の機材に電源供給することになるかな。
中継でWiFiを使う場合には、先ほど書いた独自の中継機を設置するというのと、その設置場所を選ぶための正確な WiFi 電波強度計が必要だと思った。
WiFi 関連だと、USB WiFI アダプターで外部アンテナに対応してるやつがあるので、それで高利得の外部アンテナを付けておくというのもいいかもしれない。ちなみに余談だが、私はそういう WiFi アダプターの中で、何と外部小型パラボラアンテナが付いたモノを持っています(笑)中継だと、しょっちゅう動くので使い物にならないだろうなぁ。
インタビュアーの人が話してる間、私は結構離れた位置から撮っていることが多かった(ロボットも撮影したりするため)。そのような場合に、何か指示とかを出すためには、かなり大声を出さないといけなくて、そのたびにカメラ/インカムのボリュームを OFF にしたりしていた。次回は私のインカム音声をワイアレスでインタビュアーの人に飛ばせればいいと思った。
あと、インタビュアーの人がいちいち1本のマイクを、相手に向けては自分に向け、みたいなことをするのは大変そうなので、インタビュアーの人用のピンマイクも必要だと強く感じた。ワイアレス送信機を改造して2入力に対応させてみたい。
2日目の中継の時には、後半インタビュアーの人に私の iPhone を持ってもらい、常時 Twitter で #robogames2010jp ハッシュタグの検索結果を見てもらうようにしていたけど、iPhone の電池がすぐ切れてしまうのが難点であった。そういう時のためにも iPhone には外部バッテリーが必要だと思った。そうすれば、PCからの中継を切ってる間でも、iPhone からすぐに予備で中継ができるだろうし。
ネット上で、誰か中継の状態を常時モニターしてくれる人が欲しかった。その人と Skype でつなぎっぱなしにしておいて、リアルタイムで中継状況を知れたら、実は回線状況が悪くて中継されてないのに必死でインタビューしてたりするのを防げたかも。
それと、最悪の状況(がまさに今回だったんだけど)を考えて、中継は全てPC側で録画しておきたかった。そうすれば今回のように、サーバ側での録画がうまくいってなかった場合でも、後日あらためてUstreamYouTubeにアップロードできていたかもしれないのに。 Ustream Producer にはそんな機能は残念ながら無いみたい。Pro 版だったら付いてるのかなぁ。もう一台の HDD ハイビジョンビデオカメラの方だったら、全てを録画しておくことが可能なので、USBビデオキャプチャバイスとか経由でそちらを使うことも検討してみます。

  • さいごに

今は、とにかく「何か中継したいしたい病」にかかってる感じ(笑)もっと場数をふんで、機材を最適化して、どんな状況でも中継してやる!をひたすら目指したい感じがしています。
今回、初めて本格的な機材(でもないか)で Ustream 中継をやってみましたが、自分なりに工夫してみたり、無い物は作ったりして、中継以外の部分でもとても楽しめました。
中継手法としても、三脚を高く掲げて高さ3mの地点からのイベント映像を中継するなど、恐らくプロでもできない(プロ用カメラの重さじゃ絶対に持ち上がらないし)方法をあみ出したりと、なかなか独自色を出すことができたのは、これまた楽しかった。
これからどんどん、固定カメラでの Ustream イベント中継が多くなって、ごくあたりまえのことになっていくと思いますが、そうなった時でも恐らく今回我々が挑戦した「イベント会場を歩き回りながらの中継」は、スマートフォンでのカジュアル中継を別として、そんなに出てこないのではないでしょうか。
そういう意味できっとこのレポートは、今後そういった「歩き回りながらダダ漏れライブ中継」スタイルでやってみよう、という人たちの参考になるのではないでしょうか。っていうかなってほしいデス!


それではまた、シリコンバレーのどこかのイベント会場からの中継でお会いしましょう〜


かづひ
Twitter: kaduhi